シンドラー社エレベーター事故

2006年6月3日、東京都港区にある23階建ての住宅「シティハイツ竹芝」に設置されたシンドラー製のエレベーターで自転車とともに乗降中の高校生が、扉が開いたまま突然上昇したかごと建物の天井に挟まれ死亡する事故が発生した。



(引用: The Asahi Shimbun)


パロマ社給湯器事故

パロマ工業が1980年4月から1989年7月にかけ製造した屋内設置型のFE式瞬間湯沸器について、同排気ファンの動作不良を原因とする一酸化炭素中毒事故が、1985年1月より20年間で全国で27件(死亡20人・重軽症19人2006年7月18日現在)発生した。


(引用: The Asahi Shimbun)


コメント

両事故の共通点は、マイクロ・プロセッサーを含む電気回路による安全装置に異常が生じたことである。シンドラー社の場合には必要な時に安全装置が機能せず、パロマ社の場合には安全装置が頻繁に誤作動して不正改造の要因となった。
両社の技術者や関係者は異常の原因探求にそれぞれ努力したはずであるが、現在のところ原因は報告されていない。
マイクロ・プロセッサーに異常をきたす原因で見逃されがちなものに電磁波干渉(EMI: Electro-magnetic Interferance)がある。安全装置は通常、故障した場合に不作動とするフェイルセーフ機構になっているが、EMIに対しては必ずしも有効ではない。
EMIによる事故は航空業界を含むほとんどの産業界が経験しており、技術者の間で横断的な情報交換の場が設けられているが、技術者や研究者はそのメカニズムを把握していない。電子機器メーカーなどは、機器ごとに電磁波のシールドを開発して実験で効果が実証されたと報告しているが、EMIは本来、再現性がまったくない現象であり、このような報告自体がEMIを理解できていない証左といえよう。
シンドラー社、パロマ社とも、事故の存在を早くから察知しており、永く隠匿していたと非難されているが、関係者が原因を探求できずになす術がなかったというのが実情ではないだろうか。
EMIの原因となる電磁波の出所には、周辺環境、同じシステムの他の機器、人間が持ち込む機器の3種類がある。航空機では人間が持ち込む機器の一部を制限しているが、最近の機種では重要な電子機器に"Rule of Majority(多数決の原理)"などのFault Tolerant Designを採用して対処している。
しかし、EMIが強く疑われるにもかかわらず、証拠が残らないために、原因不明か他の原因と認定されている事故も少なくない。1994年4月26日に名古屋空港で発生した中華航空140便、A300-600の事故では、不意にエンジン推力レバーがTOGAモードに入ったのはEMIが原因ではないかとも疑われている。
米国のある航空機メーカーは過去にEMI対策を研究したが、既存の電線をすべて光ファイバーに換装したとしてもつなぎ目でEMIが発生する可能性を皆無にできないという報告を行っている。
シンドラー社とパロマ社の場合にはある共通の要因が考えられ、その要因を排除すれば一定の効果は期待できると思われるが、EMIの抜本的な対策とはいえない。
EMI問題は、コンピューターやマイクロ・プロセッサーによるディジタル化が急速に進んでいる医療界に波及して、深刻な医療事故を引き起こす懸念もある。
当社はEMIのメカニズムをかなりの程度把握しており、EMIは再現性がないことと、抜本的な防止策が存在しないという点でヒューマンエラーと酷似していると考えている。EMIに対しては既存の技術的対策では不十分であり、当社が開発したエラーマネージメント手法がブレイクスルーとなるはずである。