事故の概要

15日午後4時20分ごろ、山口県下関市山の田本町のショッピングセンター「山の田サティ」(溝手秀明店長)の立体駐車場から乗用車が転落したと110番通報があった。車には男女2人ずつ計4人が乗っており、立体駐車場から金網のフェンスなどを突き破って約8メートル下の地面に転落した。4人は市内の病院に運ばれたが、全身を打っており、死亡した。
 下関署の調べでは、運転していたのは、北九州市戸畑区千防1丁目、無職高橋和弘さん(73)。助手席に福岡市東区香椎駅前3丁目、無職大坪勘蔵さん(76)、後部座席に高橋さんの妻シズノさん(70)と、北九州市八幡東区勝山1丁目、無職永松冨佐子さん(62)が乗っていた。
 立体駐車場は屋上付きの2階建てで約400台止められる。現場は2階から屋上へ上がる通路で、車は右に曲がるところで曲がらずに直進し、高さ約60センチのガードパイプに衝突後、その先の高さ約2メートルの金網フェンスを破り転落。落下点はJR山陽線の線路沿いの草地で、人はいなかった。
 乗用車はRV車で、同署は当時の車の速度やガードパイプなどの強度を調べている。車内に下関市北部にある観光地・角島(つの・しま)で昼ごろ食事をしたことを示すレシートなどがあったことから4人は角島に行った後、同店に来たとみている。
 高橋和弘さんの知人によると、和弘さんはかつて自動車教習所の指導員をしていたという。
 乗用車は転落した際に転覆して屋根がつぶれるなど大破した。山の田サティ関係者は「徐行していればガードパイプに接触しても転落はしないはず。想定していなかった事態」と話している。
 現場はJR下関駅の北約4.5キロの住宅地で、山の田サティは郊外型の商業施設。

(朝日新聞) 2006年11月16日(木)01:25



(引用: 読売新聞)


コメント


土地の有効活用と駐車規制の厳格化から、商業地域に立体駐車場が増えているが、立体駐車場からの車輌の転落事故が社会問題化している。関係者の間で鋭意、対策が検討されているが、ヒューマンファクターの観点や、他の分野での類似事故との関連はあまり議論されていない。
当社の分析では、この種の事故の要因としては二つ考えられる。
一つは、電磁波干渉(EMI: Electro-magnetic Interferance)によるエンジンの燃料噴射制御装置の誤作動で、車輌が不意に急発進したことにより運転者が一種のパニックに陥るものであり、この事故は立体駐車場に限らず地上でも起きている。
運転者や遺族と自動車会社の間で訴訟も起きているが、EMIが再現性がないために証拠として立証できず、「アクセルとブレーキの踏み間違い」という自動車会社の主張が通っている。
もう一つは、立体駐車場の暗い部分から屋上などに出て空を見たり、大きな開口部から空を見た際に運転者が陥る空間識失調(Spatial Disorientation)とよばれる潜在意識におけるエラーである。
空間識失調はさまざまな局面で発生するが、戦闘機のパイロットが急上昇で雲から出た後に空を見て、平衡感覚を失って墜落するものはバーティゴ(Vertigo)とよばれ、パイロットの間で恐れられている。
バーティゴは訓練教官などのベテランや第一線の若いパイロットでも経験するエラーであり、上記の事故の運転者が自動車教習所の指導員であったことや、高齢であったことは、直接関係がない。
空間識失調は交通事故とも無縁ではない。立体交差のトンネルから出た直後の交差点で追突事故が多いことや、高速道路のインターにおける特定の急カーブで転落事故が多いのも、空間識失調が関係している。
JR西日本の脱線事故で、運転手がカーブで加速するという異常行動をとったのも、異常振動による空間識失調で車輌が止まっていると錯覚したためと考えられる。(海外でも同種事例あり。)
道路交通行政では、立体駐車場のガードを強化する対策を計画しているが、この対策は抜本的なものではなく、膨大な費用を要する。
当社のヒューマンファクター設計は、この種の問題に対して現実的な解決策を提案できる。