| SONY製電池の爆発事故 |
|
本年9月20日、米国シリコンバレーのYahoo本社で、DELL製のノートPCに搭載されたSONY製のリチウムイオン電池が爆発して、数百人が非難した。また、9月16日にも、米国ロスアンジェルス空港において同じような爆発事故があった。 |
| これを契機に,、SONYは960万個もの電池の自主回収を余儀なくされ、ブランドに対する信頼を失うとともに、経営的にも苦境に立たされている。 |
![]() (引用: ENGADGET) |
| コメント |
| SONYは電池の製造工程で金属の微粒子が混入したことが原因と発表しているが、この見解はあたかも単なる品質管理の問題であるかの印象をあたえ、問題の解決をミスリードする可能性がある。 |
| 電池(バッテリー)、特に小型化された充電式電池はこれまでも過充電、ショートなどの過放電、機械的損傷などの原因で、さまざまな局面で発火あるいは爆発している。 |
| 報道されているものに限っても、ウォークマン、携帯電話、医療用除細動器(AED)、iPod、自動車に搭載された電池の爆発が起こっており、多くの人が負傷している。PC電池の爆発もSONY製が初めてではない。 |
| 中でも圧巻なのは、海外で取材するためにテレビカメラマンがチェックインしたカメラ用電池が航空機に搭載される直前に爆発炎上したケースで、爆発が離陸後であれば大惨事に至るところであった。 |
![]() (引用: AP) |
| ワークマン用のニッケルカドミューム電池には運搬用のケースが用意されており、蓋の裏側には「金属類(コイン、キー、ガムの包装紙、ネックレスなど)で+−がショートすると、発熱、発火の危険があります」と小さな字で注意書きされている。 |
| 航空界では顧客の要求で機内にPC用の電源を設けるという動きがあるが、いくつかの航空会社では機内におけるPCの使用すら禁止することをすでに決めている。 |
| 2003年11月29日に発生した宇宙航空研究開発機構(JAXA)のH2Aロケット6号機の打ち上げ失敗事故は、打ち上げ直後に2機の固体ロケットブースターのうちの1機が切り離せなかったためであるが、インターネットで公開されている報告によると、その原因は、メインのロケットの噴流が漏れて、ロケットブースターの固定ボルトを破壊するための爆薬の導爆線を焼損させたためとみられている。 |
![]() (引用: JAXA) |
| しかし、JAXAは海中に沈んだロケットブースターを回収することができず、原因の確認はできていない。 |
| ここで注目すべきは、導爆線の近傍に高性能電池が配置されていることである。 |
| JAXAは原因調査におけるFTA(Fault Tree Analysis)の中でこの電池に注目しているが、ショートによる過電流のみを想定して、周辺の温度が上昇しはじめた時点では電流に異常は見られないという理由で、電池の異常を原因の可能性から除外している。しかし、電池が爆発する原因はショートによる過電流だけではなく、さまざまな要因が考えられる。 |
| 仮に、今回の事故で導爆線を焼損させた原因が高性能電池の爆発でないとしても、ミッションの成否を左右するほど重要な導爆線の近傍に高性能電池を配置することは好ましくない。他に電池を配置する場所がなければ、互いに独立した2本の導爆線を設けるのがヒューマンファクター設計の概念といえる。 |
| 宇宙開発や電子機器産業にたずさわるハイテク技術者がなぜヒューマンファクターやリスクマネージメントなどのローテクに弱いのであろうか。その要因は技術者の教育にあるようにも思える。 |
| 幼少時に受ける理科の授業では、電池は左図のように結合して使うということしか教えられず、右図のように結合すればどうなるかはあまり教えられない。ましてや実験は、危険だということで行われることはない。 |
![]() ![]() |
| 上記のことは理科に限らず、ほとんどすべての技術者教育についていえる。言い換えれば、「どうすれば物事はうまく進むか」は教えられるが、「物事にはうまくいかないことがある」ということは教えられない。ヒューマンファクターではこれらをそれぞれ、Gain ControlとLoss Controlといっているが、ハイテク技術者はLoss Controlに弱いともいわれている。 |
| この傾向は航空学科に限らず、工学系、理学系学科全般にいえることであり、ハイテク技術者の潜在意識の中にリスクに関する認識が乏しいことが、産業界で横断的に頻発している高性能電池の爆発という問題の解決が疎かになっている一因といえるのではないだろうか。 |
| 米国の航空産業界に核となる人材を多数輩出している名門のオハイオ州立大学航空学科にはヒューマンファクターや航空心理学(日本人が考える文学系の心理学とはまったく異なり、ライト兄弟以来、伝統として受け継がれている本来の航空学といわれる学問)のコースがあり、ほぼ半数の学生が専攻している。ヒューマンファクターや航空心理学の知識なしには大型の民間航空機やロケットは設計できない。米国のNASAがヒューマンファクターに力を注いでいるのもそのためであり、米国の航空界の底力をうかがわせる。 |