| エラーの説明 |
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弊社の代表が著したヒューマンファクター・ガイドブック(日本航空技術研究所編、1995年)では、エラーを「ある行動の結果がその状況における客観的期待値を満足しないこと」と定義している。この定義の「客観的期待値」という表現は世界でもユニークなものであり、弊社の潜在意識に焦点を当てたエラー理論の基礎となっている。 |
| 英国の詩人Alexander Pope(1688-1744)が批評論(An Essay On Criticism)の中で書いている"To err is human"という言葉がわが国では「人は誰もが間違える」などと訳され抽象的に理解されているが、以下のエラーの説明により具体的に理解できるようになる。エラーを誤解していれば効果的なエラーマネージメントやリスクマネージメントは望むべくもない。 |
![]() Alexander Pope(1688-1744) |
| エラーについて説明するには下図のJastrowの「ウサギとカモ」という錯視図が適している。 |
![]() Jastrowの錯視図 |
| 目を閉じて身体をリラックスさせた後におもむろに目を開けてこの図を見た場合に、ある人はウサギに見え、またある人はカモに見える。これが潜在意識であり、この実験からも、潜在意識が人によって異なることがわかる。この図があいまいであり、何に見えるか断定できないという段階ではまだエラーとはいえない。 |
| ここで仮にこの図の作者がウサギのつもりで描いたとしよう。そしてこの図が何に見えるか聞いた場合に、潜在意識でカモに見える人がそのままカモと答えると、初めてそれがエラーということになる。逆に、作者がカモのつもりで描いたと主張すれば、ウサギに見える人がエラーをしたことになる。 |
| このように、人間があいまいな存在に対して異なった判断をするということ自体はエラーとはいえないが、それを意思決定を経て行動に移した結果が客観的な期待値(Jastrowの図の例では作者の意図)と反している場合に初めてエラーをしたということになる。 |
| 誤解を恐れずあえてわかりやすい表現をすれば、人間は単独ではエラーをすることはない。Jastrowの図の例でも、作者という人間の存在があって、その人間の意図との関連においてエラーが定義づけられる。言い換えれば、エラーは二人以上の人間から成る人間社会においてのみ存在することになる。 |
| エラーに似た言葉として錯覚(Illusion)があるが、厳密にはこれはエラーとはいえない。Jastrowの図が二通りに見えることがエラーといえないのと同じである。 |
| 作者がウサギのつもりで描いた図がカモに見える人でも、目を凝らしてみればウサギに見えることがある。これが顕在意識であり、「よく注意していればエラーはしない」と主張する人の根拠であるが、人間は四六時中注意を持続することはできない。顕在意識による行動は人間の行動のわずか3%程度といわれている。 |
| 目を凝らしてもウサギに見えないことが稀にあるが、これが顕在意識のエラーである。この種のエラーに対する対策は容易で、図に「これはウサギである」と注記しておけばよい。これがマニュアルや規定の原点であるが、マニュアルを参照するには顕在意識が必要であり、潜在意識で行動する場合にはマニュアルはほとんど無力であることがわかる。また、すべてのあいまいな存在にマニュアルを準備することは現実的に不可能といえる。 |
| 最近では「エラーをしてもそれが事故に至らないようにすればよい」というエラートレランス(過誤許容)の考え方が提唱されているが、これも、「言うは易く行うは難し」で、あまり具体性をもたない。弊社のエラーマネージメント手法は、潜在意識で行動している際にもエラーを極力少なくすることを目標にしている。それは、人間の行動の3%にしか有効でないISO9001などのマニュアル主義の安全管理とはまったく異なるものである。 |