一を聞いて十を知る

「一を聞いて十を知る」とは、物事の一端を聞いただけで、その全体像を理解できる能力をもっていることで、とても聡明で、現代風にいえば水平展開思考に長けていることを表す。その語源は下記の孔子の言にある。
「子(孔子のこと)、子貢に問いて曰(のたまわ)く、汝(なんじ)と回と孰(いず)れか愈(まさ)れる。対(こた)えて曰く、賜(子貢のこと)や、何ぞ敢(あえ)て回を望まん。回や、一を聞いて十を知る、賜や、一を聞いて以て二を知る。子曰く、如(し)かざるなり、吾(われ)と汝と如かざるなり。」
この意味は次の通りである。
孔子が子貢に問いかけた。お前と顔回(がんかい)とでは、どちらが優れているか。子貢は答えた。「私はとうてい回の足元にも及びません。回は一を聞いて十を知る事が出来ます。私は一を聞いてもニしか知り得ません。」 すると、孔子が言った。「その通りだ。私もお前と同じで顔回には及ばない。」
ここに出てくる顔回という人物こそ「一を聞いて十を知る」人なのである。顔回は孔子の一番弟子であるが、若くしてこの世を去ってしまった。孔子は顔回を最も愛し、後継者と考えていた。論語の中には、孔子が顔回を褒めた言葉が多数見受けられる。顔回が亡くなった時の孔子の落胆ぶりは激しかったと伝えられている。


孔子( BC551-BC479)


コメント

この思考能力こそが事故やトラブルを事前に察知するうえで最も必要な能力である。英語の諺で近い意味をもつものは"A word to a wise man is enough."(かしこい人には、ひとつの言葉で十分だ。)であるが、当社代表はあえて"Listening to One, then immediately understanding Ten."という直訳でヒューマンファクターの国際的な議論の場で紹介して多くの人達の共感を得た。カナダの中堅航空会社であるHawk Airはこれを自社の安全啓蒙誌(2ページ目の最下段)に掲載してくれている。
「一を聞いて十を知る」能力は物事の本質を見極めることに努めればさほど難しいことではない。物事の本質には潜在意識も含まれる。潜在意識は、フロイトがいうような深層心理でもないし、マーフィーがいうような人間の秘めたる力でもない。潜在意識こそが本来の「人間」であり、顕在意識で我々が認識している世界は「バーチャルリアリティー」と考えると、多くの事象の本質や共通点が見えてくる。
当社のヒューマンファクター訓練では、「一を聞いて十を知る」という能力をトップダウンの問題解決という表現でわかりやすく解説して養成する。